薬剤師すずの書斎

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私、白血病になりました④~ついに正式な病名が判明~

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輸血開始

身体の異常を感じ、朝いちばんに受診し、外来で病名を告げられ、追加検査をして、やっと病室についたのが17:00。

しかも、外来から病室まではストレッチャーに乗って、横になりながら移動。

全然元気で歩けるのに、車いすではなくてストレッチャーを用意されたことに、またこの病気の深刻さを実感した。

病室は個室だった。

白血球が少なくて感染症にかかりやすいので、他の患者とは別の部屋にしてくれたのだ。また、1畳分くらいある大きな空気清浄機が病室に設置され、常に部屋の空気が浄化されていた。

やっと病室についても、入れ替わり立ち代わり病院のスタッフが出入りして、休まる暇を与えられなかった。が、その方が良かったのだろう。まだ病名がはっきりしないなか、一人病室で居ても色々想像し、要らぬ心配事が増えていたに違いない。

まず、大きな出血を予防するために、補液以外に輸血が開始される。

 

ソルコーテフ(輸血をした時に体が拒否反応をするのを抑える薬)

新鮮凍結血漿(血しょう:血液の白血球・赤血球・血小板以外部分、血液凝固因子が含まれる)を輸血

生理食塩水50ml

ソルコーテフ

濃厚血小板(血小板:血液を固まらせる働きがある)

リコモジュリン(血栓をできにくくする薬)

 

あれ?出血の予防のためになんで血の塊である血栓をできにくくするのかって?

これは、血管内の血液が過剰の固まることを防いで、血栓ができることで起こる臓器障害や出血症状を改善してくれるお薬なのだ。DICとい病気の治療薬でもある。

DICについては後でお話しするとしよう。

 

19:00

 

幼稚園終わりの子供のお迎えを済ませた主人も病院にやっと到着し、先生からのお話が始まった。

 

本日、婦人科に過多月経でいらっしゃいましたが、そこの検査で血球の低下を認めました。加えて、芽球という白血病細胞の増えていました。

骨髄検査も追加で行わさせて頂いたが、骨髄の中にたくさんの白血病細胞が認められました。病名は、、、

 

「急性前骨髄球性白血病」と思われます。

 

これは急性骨髄性白血病の一種で、特殊な細胞がみられるもので、M3という分類にあたります。

この病気は、t(15:17)といった染色体異常を認めることが多く、原因は分かってないが、血球の分化が障害され、成熟する前に芽球の状態で止まってしまう病気です。

 

要は、正常だと骨髄の中にある血液の赤ちゃん細胞(骨髄芽球)はそれぞれ成長していくと白血球や血小板や赤血球になるのに、私の場合は成長するはずの赤ちゃん細胞が癌化して、異常増殖してしまって白血球や血小板や赤血球を作り出せなくなっているようだ。

 

ひとまず、血球が減っているので、免疫や感染への抵抗を司る白血球の減少で感染症にかかり易かったり、赤血球の減少で貧血の症状や、血小板の減少で出血のリスクが高くなっています。特に今回の急性前骨髄球性白血病という病気は出血のリスクが高いです。怖いのは脳出血です。血小板が少ないので、出血しても手術ができませんし、治療が難しくなります。これで命を落とす方もいます。この2週間は山場なので、転倒など出血には十分気をつけてください。

 

こんな意識がはっきりしている患者に

今が山場です。

なんて言っちゃうんだな・・・

 

先生の話を聞いて、大体のことは把握できた。けれど、ちゃんとはっきりさせておきたくて、私は1つだけ最後に質問をした。

 

私「出血しないよう気をつけていても、自然に出血してしまうこともあるんですよね。」

 

おおむね答えは予想できていたけど、先生の口からちゃんと聞いておきたかったのだ。

 

先生「あります。安静にしていても出血が起こるときはおこります。」

 

いつ爆発するかもしれない爆弾を抱えているわけだ、私の身体は。

 

播種性血管内凝固症候群(DIC)というのが怖いらしい。

がん、白血病、細菌感染症などの基礎疾患にかかっている人によくおこる合併症だ。

がん細胞や細菌細胞のせいで身体の中で血液を固まらせる反応が起きて、全身に血栓が生じてしまう。そうすると、血管内の血流が滞り他の臓器までも悪くしてしまうのだ。それだけではなく、次にその血を固まらせる反応を止めようと、血栓を溶かそうとする物質が活発に働くようになり、臓器からも出血しやすい状況になり、脳出血や吐血、血尿などを引き起こす。

身体のなかで、無秩序にこの現象が起こる。だからDICは治療が難しく、死亡率が高い疾患なのだ。

 

治療への覚悟は決まっていた。だって理由は一つ。超絶ママっ子の3歳と1歳の子供を置いて死ぬわけにはいかないからだ。

ただ、私の覚悟だけではどうもできない爆弾は、私の手でも医師である先生の手でもどうしようも処理できないのだ。

このあと私は誰もいなくなった病室でたった一人で泣くことになる。号泣することになる。

病院の方針で、感染症や周りへの迷惑を考慮し、子供は面会ができないことになっていた。

このまま我が子に別れを言えないまま死にたくない。

まだまだお話したいこと、教えたいことがたっくさんあったのに。

永遠に起きないママが家に帰ったら、上の子は立ち直れないだろうな。

そんなことにはなりたくない。申し訳なさ過ぎて、死んで家に帰ることはしたくない。

生きて帰りたい。

生きて子供たちを抱きしめたい。

 

 

次回へ続く

 

病名や個人でそれぞれ症状や感じ方、副作用の有無などは変わってきます。ここに書かれていることは、私の体験談であり、ほんの1例です。同じ病気で不安になっている人や患者の気持ちが知りたい医療従事者や私の周りの人に状況を知ってほしいと思って書いているので参考程度に読んでくださいね。