薬剤師すずの書斎

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目の前でアナフィラキシー発症!薬剤師はどう対応する?

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すっかり秋ですね~。

こんにちは!薬剤師すずです。

今回はアナフィラキシーの初期対応についてまとめてみました。

先日、お友達のおチビちゃんの手が腫れていたのです。(゜o゜)

「どーしたの??」

と聞くと、

「昨日、虫にさされちゃったのよね。」

とお友達。

「病院すぐに行った方がいいよ!!!」

と伝えました。

昨日刺されたと言っていて、時間も経っているし、所見では全身症状まではなさそうだったけど、ちょうど、この記事を執筆中だっとのこともあって、すぐに病院へ行ってもらいました。(;・∀・)

幸い点滴をすることもなく、内服薬を処方してもらい帰宅できたそうです。(*^^*)

よかったよかった。。。

だがしかし、翌日その子は発熱!

お友達は、風邪ひいたかもといっていたけれど、私はアナフィラキシーを疑いましたよ!!!

でも、処方された薬を見せてもらったら、念のためのアンヒバ坐剤(解熱剤)を処方されていたので、すぐに使用し、症状もすぐに治まりました(;´∀`)ナイスセンセイ!

ちなみに参考までに今回の処方内容はRp. メイアクトMS、ビオフェルミンR、アレロック、アンヒバ坐剤。

 

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先日、新型コロナワクチンを接種した時のことです。問診表にはアナフィラキシー(ショック状態など)になったことがありますか?という項目がありました。私はリンゴにアレルギーがありますが、ショック状態の経験はなく口腔内が痒くなるだけなので「いいえ」と記載しました。ところが、接種前の診察時にそのことを医師に話すと、医師が「口腔内が痒いという症状はもはや重症と思っている。」と言ったのです。そして、ワクチン接種後、会場での待機時間は、通常15分だったのですが、私はその倍の30分の待機となってしまいました。幸い、ワクチン接種後のアレルギーは見られませんでしたが、その待機時間中、もし症状がでたら医療機関ではないこの公民館で十分な対応ができるのだろうか、と不安になったのです。病院で発症すれば、即時対応ができますが、医師が近くにいない調剤薬局や街中などの日常生活のなかで、自分の周りでアナフィラキシーが発症した場合は薬剤師としてどのように行動したらよいのでしょうか。また、病院薬剤師として現場でどのような仕事が期待されているのか、気にかかったのでまとめてみました。

 

アナフィラキシーの原因と症状

アナフィラキシーが発症するには、食物・虫・アルコール・医薬品・ラテックスなど多くの誘因があり、そのなかでも日本では食物が最も多いといわれています。すなわち、医療機関以外の場所でアナフィラキシーを発症する可能性がほとんどなのです。

 

~診断基準~

以下の3項目のうちのいずれかに該当すればアナフィラキシーと診断する。

1⃣皮膚症状(全身の発疹、瘙痒または紅潮)、または粘膜症状(口唇・舌・口蓋垂の腫脹など)のいずれかが存在し、急速に(数分~数時間内)発現する症状で、かつ呼吸器症状(呼吸困難、気道狭窄、喘鳴、低酸素血症)、循環器症状(血圧低下、意識障害)の少なくとも1つを伴う。

2⃣アレルゲンへの暴露の後、急速に(数分~数時間以内)発現する皮膚・粘膜症状、呼吸器症状、循環器症状、持続する消化器症状(腹部疝痛、嘔吐)のうち、2つ以上を伴う。

3⃣アレルゲンへの暴露後の急速な(数分~数時間以内)血圧低下。

 

このように、発症する臓器は多岐にわたり、症状は、皮膚・粘膜、上気道・下気道、消化器、心血管系、中枢神経系の中の2つ以上の器官系に生じるものを示します。

 

処置が先?119が先?初期対応を理解しよう!

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アナフィラキシー対応チャート(日本救急医学会HP)https://www.jaam.jp/info/2021/files/anaphylaxis_chart.pdf?v=20210622(参照2021-10-19)

アナフィラキシーになると、必ずしも心停止を起こすとは限りませんが、海外のデータでは心停止までに至ったケースでは心停止までの平均時間は薬物で5分、毒蜂が15分、食物では30分といわれています。患者がアナフィラキシーを発症した現場に救急医がいない場合は、治療環境が整うまで薬剤師としてどのように対応すればよいでしょうか。

 

患者の症状からアナフィラキシーを疑ったら、医師が到着する前にまずバイタルサインを診て患者の生命の危機を把握しましょう。その際に、急な意識消失よる転倒を防ぐために、患者を仰臥位にして下さい。また、嘔吐や吐気がある場合は、吐物で窒息しない様に顔を横向きしましょう。また、血圧低下による脳虚血を防ぐためにも、下肢を30㎝程度挙上しておくと良いです。(アナフィラキシーを起こすと、血管透過性亢進が起こり、脱水、血圧低下や、意識消失などのショックを起こしやすいのです。)

もし、エピペン®を携帯している患者であれば、アナフィラキシーの既往歴があるとのことで、気道、呼吸、循環系、消化器のいずれかに症状が現れていれば、速やかにためらわず大腿の前外側への筋注を補助しましょう。それと同時に、119で救急車を要請してください。

 

救急車が到着するまでは、バイタルサインの測定を継続して、患者の異変に注意し、必要であれば追加処置として、酸素の吸入、心肺蘇生をして生命の維持に努めてください。

さらに、患者の情報をお薬手帳や周りの人から持病や体重(アドレナリンの投与量を決めるため)の聞き取りをしておくと、医師や救急車が到着した時にスムーズに申し送りができ、より早く適切な処置をすることができます。

 

薬剤師としてのアナフィラキシーの初期対応をするにあたり、バイタルサインの測定をするときに必要となるパルスオキシメーター、血圧計、聴診器、時計、AED、手袋(ラテックスフリーのもの)、酸素缶などのものは、薬局にも常備しておいた方が良いでしょう。

 

第一選択薬のアドレナリンが効かないケースがある!?

アナフィラキシー症状の第一選択薬は、強いα、β受容体刺激作用とヒスタミンなどを含む化学伝達物質遊離抑制作用があるアドレナリンとなっています。

日本ではアドレナリン製剤としては、ボスミン®・アドレナリン注シリンジ®・エピペン®があります。

アドレナリン使用時の併用禁忌薬はありますが、アナフィラキシーショックの救急治療や蘇生の処置が優先されますので、その時に限り使用ができます。また、心機能亢進作用・血圧上昇・平滑筋の収縮・血糖上昇作用があるため、妊娠していないか、循環器系・呼吸器系・糖尿病などの既往歴がないか、また、アドレナリンは多くの薬剤との相互作用があるため、内服薬がないかの患者の情報が重要になってきます。

そして、入院してアドレナリンの加療が必要な場合は、内服薬の減量・増量・休薬などを検討する必要があります。

 

すぐにアドレナリンの効果がみられない場合のチェックポイントとしては、以下の4点が挙げられます。

 

  • アドレナリンの投与の遅れがないか
  • 筋注にしたか
  • 補液が十分か(脱水が起こってないか)
  • β遮断薬内服中でないか

 

なぜ、静注・皮下注ではなく筋注なのでしょうか?実は、アドレナリンを静注すると、急激な血圧上昇を起こす場合があります。そして、早くアドレナリンの効果を得たい場合は、皮下注ではなく筋注の方が速攻性があるのです。

 

 

さらには、どうして上腕などではなく大腿部前外側に打つのでしょうか?それは、大腿の筋肉が人体の中で大きな筋肉であり、確実に筋注ができる部位なのです。そして大腿内側には大切な太い血管や神経があるので、外側に筋注するとよいでしょう。加えて、上腕の筋注時より大腿の外側広筋に筋注した方が、血漿中のエピネフリンの濃度のピーク値が高くなったという研究結果もあります。

(参照:Epinephrine absorption in adults: Intramuscular versus subcutaneous injection.J Allergy Clin Immunol 2001;108:871.」)

 

ちなみに人体の中で2番目に大きい筋肉は臀部ですが、仰臥位の人に臀部に注射するのは難しいですし、脂肪が多く筋肉まで注射針が届かない場合もあるので避けましょう。

そして、手指にアドレナリンを注射すると、血流低下を起こし、壊死する可能性もあるので気をつけてください。

 

次に、生命維持に重要である、心機能や気管支に関係しているβ受容体についてですが、β遮断薬を内服中の患者はやはりアナフィラキシーが重症化しやすい傾向にあり、内服しているかの確認が重要です。例え内服していても、第一選択薬は、アドレナリンには変わりないですが、アドレナリン抵抗性があり、治療が非常に難しくなります。アドレナリンの効果がみえない場合は、保険適応外ではありますが、交感神経を介さずcAMPを増やすことで、心収縮を改善し、心拍増強、心筋収縮力の増加を期待できる、グルカゴンの使用も頭のどこかに置いておくとよいと思います。

 

薬剤師の知識で初期対応を!

いつこのような状況に遭遇しても大丈夫なように、血圧・脈拍数・SpO2・呼吸回数・体温・意識レベルなどのバイタルサインの基準値のおさらいや、エピペン®の使用方法や注意事項を確認しておきたいですね。

また、ボスミン®・アドレナリン注シリンジ®・エピペン®の添付文書も、もう一度熟読して用量や併用薬との相互作用について復習をしておきたいものです。

アナフィラキシーは、いかに早くアドレナリンの投与ができるかがカギとなります。

薬剤師は、直接、患者に医療行為をすることは認められていませんが、今回このテーマを調べ、まとめてみて、薬剤師としての知識と技量は救命救急の現場でも必要不可欠であると確信しました。

 

参考:F.Estelle R.Simons.Epinephrine 「absorption in adults: Intramuscular versus subcutaneous injection .J Allergy Clin Immunol 2001;108:871. 」https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(01)71625-9/fulltext(参照2021-10-20)

参考: アナフィラキシーガイドライン (anaphylaxis-guideline.jp) アレルギー学会HP(参照2021-10-26)

参考:エピペン®の使い方かんたんガイドブック.ファイザー株式会社.

http://www.khf119-osaka.jp/KOUSYUU/KYUUMEIKOUSYUU/pdf/epipentukaikata.pdf

(参照2021-10-19)

参考:エピペン®ガイドブック.ヴァイトリス製薬.EPI_guidebook_j.pdf (epipen.jp) (参照2021-10-19)

参考:アナフィラキシーってなあに.Jp. ヴァイトリス製薬HP. https://allergy72.jp/ (参照2021-10-20)

参考:Tips & Pitfalls in EM 救急診療の落とし穴.日本内科学会雑誌 108 巻 3 号P559-560