薬剤師すずの書斎

コーヒーが飲めないライターの机はPCとお菓子の山

後発医薬品企業の不祥事と今後の日本の医薬品市場の展望

 

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こんにちは。

明けまして、、、、も言いそびれてしまいました(^▽^;)

とにもかくにも今年もよろしくおねがいします_(._.)_

12月中に記事を仕上げようと思って、自分にノルマを課したけれども、年末の忙しさをなめてて達成できなかった新乃すずです。新年早々に自分を追い込んで書き上げました(;´∀`)なので、正確には1月の記事の紹介です(〃▽〃)

一般の人たちはなかなか知りえない情報ですが、現在お薬の供給が滞っていて、製薬会社や調剤薬局やお薬の卸ではてんやわんやなんです。。。

そのきっかけは、例のジェネリック医薬品の中に違う成分のお薬が混入してしまった事件がきっかけです。これがお薬の流通の歯車を狂わせてしまったんですよね。

1社の問題かと思いきや、次々と他の会社でも問題が発覚。なので、今まで通りの製造ができなくなったりして、他の会社も製造調整が必要になってしまったとかで、みんなでもとの流通に早く戻そうと一生懸命がんばってます。

ジェネリック医薬品の信頼性を取り戻すためにも、この日本の医療費を抑えるためにも、日本が創薬で世界に追いつくためにも、今の日本のシステムを改善する時期なんですよね。そんなことをちょっと調べて、考えていました。

良かったらサイトにも飛んで見てみてください。


(★´∀`)ノ。。。。。。。。。。。。。。。。。。ココカラ12月記事内容START。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 

後発医薬品企業の不祥事と医薬品不足は本当に薄利多売の結果なのか? | ファーマボックス 薬剤師専用 求人×PRサイト (pharmabox.jp)

 

2020年のある後発品企業における品質問題を発端に、次々に後発品企業における自主回収がおこりました。2021年12月現在、出荷停止や出荷調整を受け3,100 品目以上の製品の供給が滞っており、医療現場で働く薬剤師もその対応に追われています。海外から見た日本の商品のイメージにある「高品質・安全・安心」をくつがえすような出来事が起こったのです。そして、ここでは後発医薬品全体が品質問題を抱えているということを言いたいのではなく、なぜルール違反をした後発品企業がうまれてしまったのか、その背景にある問題の解明と、今後の日本の医薬品市場の展望について考えてみました。

 

医薬品製造環境が整っていなかった原因は?

2021年6月に起きた、イトラコナゾールの経口剤に睡眠剤が混入されていた小林化工を例にみてみましょう。

不祥事を起こした企業の外部調査委員会の報告によると様々なルールの逸脱や隠ぺいがあったようです。その一部を書き出してみました。

 

・現場作業記録の修正がなされておらず、正規の書類通りに医薬品が製造されていなかった

・5kgのところを5.35㎏で計る等、製造指図通りの正確な原薬の秤量がおこなわれていなかった

・指示された量と異なっていた場合は、担当者が秤量記録をあとで作り直していた

・取り違い防止策が機能しておらず、原薬の混合時にダブルチェックを怠っていた

定量試験において「~の方が上手くいくと思った」と効率化目的の理由で試験方法の変更がされていた

定量試験で異常ピークが現れても、原因追究せずに試験合格とした

・棚卸の時に、実在庫と在庫管理システム上の数値の齟齬があっても修正し、問題視してこなかった

・コスト削減にため、原薬の調達先の変更が相次ぎ齟齬問題を後回しにした

 

全てに共通して言えることは、人材不足、教育不足、社内の風通しの悪さ、利益優先が故に起こったものだと思われます。各部署の責任者は他部署と兼任していることが多く、責任者に研修が行われても、時間がないとのことで部下達には、資料を閲覧してもらう程度で済まされていたようです。それ故、自分の業務の知識が十分に備わっている従業員が育たず、この企業の風習によって経験豊富な従業員のモチベーションも維持するのは難しい環境であったと予想されます。

しかしながら、書類の作り直しに手間をかける時間があるなら、ほかにやるべきことはあったはずです。誤混入された薬が市場に出るまでに、誤混入が確認される機会は幾度とありましたが、怠慢な仕事の結果、それらの機会を失って多くの健康被害を招いてしまいました。

無論、この状況に疑問を持ち、問題提起や上司に相談する従業員はいましたが、大きな問題として取り上げることはなく、言ってしまえば上がもみ消し、常態化したまま長年これらの問題は埋もれてしまったのです。

 

厚生労働省が小林化工を視察「安全性の軽視・意識の低さを感じた」

先発品のうち使用頻度が高く、薬価が高い方が後発品企業は参入を目指す傾向にあります。

その先発品の特許が切れる時期を考慮し、他社よりもいち早く承認されるよう後発医薬品の開発計画を立てるのです。というのも、1番早いタイミングで承認を取り薬価収載されないと、次回のタイミングはおよそ2年後になるので、その時には薬価引き下げが起こり、さらには他社に市場シェアを奪われてしまっている状況になるからです。

そして1990年代より日本政府は、医療保険財政の改善に、後発品医薬品の使用率をあげようと矢継ぎ早に政策を打ち出しています。2007年時点で15%だったのを、段階的に2020年までに目標を80%にし、現在、地方差はあるものの概ね80%に達しました。その使用率増加のスピードに乗り、後発医薬品市場を生き抜くためには、企業側も業容を急速に拡大せざるを得なかったのです。そこで小林化工は医薬品製造に対する自覚を欠如したまま業績を上げるべく無責任な仕事をしていたことになります。

確かに小林化工が行ったことは「安全性の軽視・意識の低さを感じた」と言え、それは薄利多売が招いたことかもしれませんが、共同開発先や親会社に「安全性試験が遅れているので1番早い承認申請を諦めましょう」とは言えないプレッシャーを感じ、利益優先をして走り続けたきっかけは矢継ぎ早の政策がきっかけになったことは否めません。

しまいには、これまで高い後発品使用率を掲げてきた政府は、今では200以上ある後発品企業が多すぎると発言しています。私にはその発言も無責任に聞こえてしまいました。

 

薬品市場の成長率は日本のみマイナス

PhRMA(米国研究製薬工業協会)は記者会見で2021年以降の先進国10カ国における市場成長予測がマイナスになるのは日本のみと見解を発表しました。

昔は、微生物が作り出す成分や、植物由来の成分をそのまま医薬品にしていましたが、その後は副作用を軽減したり、使いやすくしたりするためにより高度な技術を必要とし、開発費も掛かるようになりました。それに反して、近年日本では度重なる薬価制度改革により、新薬が市場に出ても研究開発費の回収が難しくなるケースもでてきています。薬価が上がると新薬導入意欲は上がりますが、薬価が下がる一方だと、今必要とされているオンコロジー新薬やバイオ新薬の業界は活気がなくなります。日本の世界シェアは米国・欧州には到底及ばず、中国は日本より存在感を示し、今にも日本は韓国の影に隠れてしまう勢いです。これは後発品企業のみならず先発品企業にとっても問題となっています。これでも、日本は先進国と呼べるのでしょうか?

 

過去の飲食業界を例に今後の医薬品市場の展望を考察

一時、飲食業界では、価格競争が過熱したことがありました。しかしながらその結末も喜ばしいものではありませんでした。

あるファーストフード企業では、商品を安くするため材料や人材を中国に求めた結果、仕入れ先の中国企業が期限切れの材料を使用するという不祥事を起こし、結果的にファーストフード企業の経営を悪化させてしまった問題が生じました。その後も異物混入の問題がおこり、企業はますます消費者の信頼を失っていきました。

ところが、現在では社員と客の声を聞き、一つの目標に社員全員で向かいサービス改善を行った結果V字回復を成し遂げたのです。低コスト市場で低迷した次は質を見直し、お客様の信頼を得られた企業が残っていく現状をみると、今後の後発品業界では原薬・海外の製薬工場や人材を自社で育成したり、製薬や創薬の技術を生かし、患者のニーズや少子高齢化社会のニーズにあった医薬品の開発やサービス等の価格以外の魅力や独自性を顧客にアピールしたりしなければいけないでしょう。

 

医薬品の安定供給に欠かせないもの

少子高齢化社会に向かっており、医療費がひっ迫している日本の財政だけではもう医薬品市場の改善は限界にきているため、国内外問わず民間企業による投資によってこの創薬のシステムを改革する必要があります。

さらに、今回の医薬品不足で医療機関・患者に与える影響は大きいため、企業間での情報共有をもっと行い、各企業の出荷状況・回復状況・今後の出荷の見通しなどを開示するシステムや、医薬品を購入する医療機関は地域一括購入等の他の方法でより安く医薬品を購入できるよう工夫するなど、購入者側の流通システムの改革もできるとよいですね。

尚且つ、今回の新型コロナウィルス感染症をきっかけにパンデミックや災害に左右されないよう原料の調達地域を分散させなければならない課題もみえてきました

今後は、後発品企業には同じ繰り返しをしないよう風通しのよい、価値ある医薬品を生み出す企業に変わって頂き、日本の「高品質・安全・安心」で名誉挽回していただきたいものです。

厚生労働省は2021年9月に革新的創薬・後発品・医薬品流通・経済安全保障に焦点をあてた「医薬品産業ビジョン2021」を公表しました。国と企業が共にその目標に向かい合い、多くの企業に投資してもらえるように、海外からも魅力的に映り、国民も誇れる医薬品市場の形成を早急に再構築しなければ、国も企業も苦しい状況が続くこととなるでしょう。

 

参考:供給不安への対応、可能なら在庫融通も  医薬局・田中総務課長 | 日刊薬業 - 医薬品産業の総合情報サイト (jiho.jp) (参照2022-1-4)

参考:後発薬中心3100品目不足 日医工不正の影響大きく 厚労省、増産と仕入れ協力求め|経済|石川のニュース|北國新聞 (hokkoku.co.jp) (参照2021-12-20)

参考:調査委員会による調査報告について.小林化工株式会社HP.210416_surveyreport.pdf (kobayashikako.co.jp) (参照2021-12-14)

参考:PhRMAオンライン記者会見「次期薬価制度改革に向けたPhRMAの見解について ~「医薬品産業ビジョン 2021」実現を目指して~」レポート/資料 | PhRMA – 米国研究製薬工業協会 (phrma-jp.org) (参照2021-12-14)