AI薬剤師に負けるな!生き残る薬剤師とは
人工知能(以下AI)の超進化版といえば、私はやっぱりドラえもんを思い浮かべます。
ドラえもんがやってきた22世紀には薬剤師は存在していると思いますか?
オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が発表したあの有名な論文「雇用の未来」の中では、私たち薬剤師は「今後10~20年で仕事を奪われる可能性は1.2%」といっています。ではやっぱり私たちが生きているうちは薬剤師って必要なんだ♪
と、論文発表当時の2015年は楽観視をしていましたが、今年ロボット薬局が始動したと新聞に記事が出ました。これでうかうかしていられない薬剤師が増えたのではないでしょうか。
厚生労働省の調査結果によると、薬剤師の数は30万人を超えており、業種別でみた場合、調剤薬局に勤務している人が一番多く、6割近くもいます。今後この10~20年でどのように薬剤師業務が変わっていくのか、調剤薬局での業務で少し予測してみましょう。
調剤薬局の業務
- 処方監査
- 処方入力
- 調剤
- 調剤監査
- 服薬指導
- その他業務
1.処方監査
処方監査こそ知識や計算式を学習させればAIは、粉薬の用量の計算や飲み合わせなどは簡単に遂行してくれることでしょう。
だがその前に、AIに読み込ませる情報が正しいかの判断は薬剤師か行わなくてはならない。疑義照会や処方内容の提案は医師との会話力を必要とするため、空気を読む・言い回しを考える技術はAIでは難しいです。
また、処方箋という現在の紙媒体が、デジタル化されるまでにはそう時間はかからないかもしれない。マイナンバーを利用し、デジタル化すればタブレット上で全て済む話だ。国会で、患者が「マイナポータル」(マイナンバーを使用する政府運営のオンラインサービス)を用いて、特定健診データや医療費・薬剤情報を確認できる案も、現在検討されている。
2.処方入力
処方監査がきちんとできていれば、AIで処方入力は可能であると考える。ややこしい保険の点数の計算も、あらかじめ情報を入力しておけば自動的に計算をしてくれるでしょう。そうなれば医療事務さんのお仕事がなくなってしまいますね。
3.調剤業務
プロローグでも書いたロボット薬局は、まさにAIが調剤していますよね。現時点で約束処方程度の調剤であれば薬剤師は必要なくなっています。大きな調剤薬局や、処方枚数が多い調剤薬局はすでに自動分包機も導入しています。また、錠剤やカプセルの吸湿性が改良されれば、今まで薬剤師の手で粉砕調剤を行っていた部分も薬歴に記録されているデータから機械がすべて調剤を行うことは可能ですし、簡易懸濁キッドが開発されれば、在宅医療されている家族の方にも錠剤やカプセルのまま処方薬をお渡しすることができます。
4.調剤監査
現在でも、自動分包機で調剤を行った処方薬は必ず薬剤師の目が入ります。調剤監査はいくら機械が行っても「機械のミス」を疑って薬剤師が監査をし、誤調剤があれば調剤をしなおす事は多々あります。ですから、ここ10~20年では、監査業務をAIに奪われることはないでしょう。
5.服薬指導
AIに薬効・服薬指導を読み込ませれば大半は指導は終了していますが、専門用語がわからない患者さんとの会話や、薬剤師が患者さんに対してのフィジカルアセスメントはAIには難しいでしょう。
患者さん「ここがなんかシクシク痛むんだけど、なんだろうな?」
患者さん「ここ見てよ、薬飲んだらこんなになっちゃったよ。」
なんていう患者さんからの訴えは、毎日のようにあります。ですが、このような会話はAIスピーカーが理解できるはずもありません。ですから濃い服薬指導を行い、患者さんとの信頼関係を築くには人と人との対話が重要となってきます。
指導内容を薬歴に音声入力で記録する技術はもうすでに存在していますが、コスト面の問題もあり普及率は低いです。
私としては、薬局の通常業務終わりに残業して、1日分の薬歴を書き上げることがどれだけストレスだったか。音声入力ができれば、人経費削減、眼精疲労軽減、肩こり軽減が期待できますね。
6.その他業務
忙しくて手が離せない時に、AIスピーカーに
薬剤師「今、ツインラインの在庫いくつ?」
AI「タダイマ63回分ノ在庫数デス。」
薬剤師「21回分足りない!発注しといて!」
AI「カシコマリマシタ。通常在庫数84回分と21回分ヲ発注イタシマシタ。」
薬剤師「いつ届く?」
AI「午後一便デス。」
なんて在庫管理までやってくれると助かります。
あとは夜間の電話対応もAIに一端を担ってくれれば、薬剤師の働き方改革もできそうです。
AIは薬剤師の味方!
薬局業務をAIに置き換えられるか簡単にみてきたけれども、すべてに共通して言えることは、単調業務はAIが行い、対人とのコミュニケーションは人間が行うことが効率が良いということです。AIの支援を受けることで、薬剤師がやるべき仕事を効率化し、その分薬剤師が行うべき業務を広げることができるのです。
日本における急速な高齢化に伴い、2025年を目途に地域包括ケアシステムの構築を推進していくと厚生労働省は言ってます。そうなれば、調剤薬局が在宅医療に介入するのことは必至です。チーム医療の一員となるわけですから、なおさら薬剤師の知識を活かした創造性とコミュニケーション能力が問われます。
また、便利になった分、悲惨なのは災害時の時にコンピューター全てが使用できなくなることです。最低限の対策を考えなくてはなりません。そして災害時に活躍できるのは能力が高い生身の薬剤師しかいません。
今のうちに、生き残れる薬剤師とは何か、自分には何が足りないのかを考える必要があるでしょう。
<参考>
https://www.cbcareer.co.jp/column/102012
厚生労働省 薬剤師調査
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/16/dl/kekka_3.pdf
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41601100S9A220C1000000/
厚生労働省 地域包括ケアシステム
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/